のらくらノーフューチャー

日常生活の中に問題意識がない。ふと気がついて、それを幸福とした。おそらく人生の中で今、もっとも幸福な時期を過ごしているのではないか。困ったこと、嫌なこと、怒っちゃうことなどが、心に絡みついて来る時、絡みついてきた悪感情を巴投げしたり、コブ…

劇場版すみっコぐらし

のけものにせものかわりもの。かわいいアウトサイダー達の心を癒やす小さな隅っこの世界。メインストリームにいられなかった彼らだからこそ面白いキャラクターになってしまうのは自明だったかもしれない。すみっコ達は隅に固まってはいるけれど、そこでじめ…

ひとつながりの過ち

電車の中が暑いと感じているのは、おそらく自分だけではなかったけれど、暑すぎて耐えられないと感じているのは、きっと自分だけで、だから電車を飛び降りたのは自分だけで、人のいないホームを歩き去りもせず、真っ赤なベンチに座りこむ人間は本当にひとり…

太陽A

冬である。北風からシベリアのにおいがする冬である。冬はいつも新鮮だ。凍っていて新鮮な感じがする。動物たちは新しい毛をまとう。もこもこになる。人間もまたもこもこになる。あたたかいダウンジャケットを着るようになるからである。東京の駅にはもこも…

ひとりきり映画祭

木曜日は、先輩のひとりが映画の試写会に誘ってくれました。僕は映画が好きで、なおかつ試写会というのには行ったことがなかったので、ゆきますと即答をしました。 試写会で上映される映画は、アメリカのアニメ映画で、シリーズの三作目。前二作は、観ていな…

普通、物体と情報

席が無かったので、空いているところに立ってスマートフォンで電子本を読むことに、最近ではすっかり感興を覚えないけれど、はじめて「えいや」と購入した一冊目、を読書する時は本当にどきどきしたもので、それは読書なのに、まるで別なことをしている気に…

鉄板の上で繰り広げられる無限のケミストリー

人生ではじめて肉バルに行った。テーブルに並べられたトンテキ400g、牛ロース、フライドポテト、オレンジジュースとビール、BGMはビルボード、騒がしい客の声、テーブルに皿を並べる店の女性の所作はうつくしく、物音一つ立てなかった。これは肉とは…

ピュアな愛の気持ち悪いポエムにしかならない愛の性質

自己啓発サークルにはまった子が砂を売っているの、と知人は言った。それはただの砂ではなく、よくわからない神様のパワーが込められた、ちからのある砂だという。そんなの馬鹿げていると思うわけ、と知人は言う。ミルクと砂糖をたっぷり入れたコーヒーを一…

最後の旅

最後の旅をしようと考えた。 鞄には着替えを少しだけ入れる。財布と携帯の充電器も。メモ帳とペンを。それから折りたたみ傘も。カメラはいらない。でもマフラーを持ってゆこう。知らない街で迷子になって、もし路地裏で冷たくなることがあったとしても、マフ…

10秒でモンスターになれる

電車に乗ってつり革につかまって読書をしていた。仕事からの帰宅中で疲れていた。左の方から大きな音がした。傘が倒れる音だ。反射的に音の方を見ると、通路に赤い傘が伏せている。持ち主であろう若い女性は、スマホを操作していた。真剣な顔をしていた。 よ…

理想の冬の一日

理想の冬の一日 会社から目的のない三連休を頂けることがあり、仕事の隙間時間等々、三連休をいかにして過ごすか計画を立てるのが好きなのだけれど、やはり時間があるのだから、時間がなければ実行が難しい・実行が面倒である行楽などを候補に上げることは多…

超次元的な愛

姉の家の小鳥の名前は「れもん」といって、名が表している通りに、華やかな黄色の羽毛をまとったコザクラインコだ。とてもかわいらしい小さなインコ。僕は鳥が好きだ。 鳥の好きなところ。羽毛が柔らかそうなところ。恐竜みたいなうろこのある脚。まんまるの…

ありがとうのきもち

そして仕事から帰り、ゲームも済んでいることだし、好きなだけ絵も描いたのだし、映画でも見ようかなと、アマゾンプライムビデオでインド映画を一本見ました。それからお風呂に入って、視界がぐるぐると回転するほど温まった後は、バスタオルで体を拭いて冷…

町と僕

北国の片田舎に生まれました。 本当に何もない小さな町でした。僕の生まれた家からは、海が見えました。海は夏になると青黒く波打ちました。綺麗なことは綺麗ですが、もっと恐ろしい感じがする海です。冬になると、空の色を映して重い灰色になりました。灰色…

秋なので

wikipediaによると、らくがきというのは、"文字や絵を面白半分やいたずらに書き記す行為 "ということになるらしいのだけれど、絵を描く時、らくがきが一番たのしいよなあと思う。 3ヶ月に1回くらい、ものすごくらくがきを描きたくなるときがあって、そういう…

ゲームオーバー

最後にパソコンの前に座ってから9日が過ぎている。 改めていつものパソコンデスクを眺めてみると、なんだか異様に散らかっていた。以前から散らかってはいたものの、すっかり当たり前の光景になってしまって、雑然としていることにすら気がつかなかった。汚…

夜走るのが楽しい

帰宅してすぐスーツを脱いでTシャツと短パンに着替えランニングシューズを装着した。ドアを開けると外は夜。星々と月。空気はひんやりしていて幻想的な生き物が建物の隙間からニュッと出てきてもおかしくはない。ランニングシューズのゴム底は神秘的なまで…

ながされないこころ

好きなことが出来る時間と心と体力がそろいました。 それで、何をしようかなと考えました。 やりたいことはたくさんありましたが、今やりたいことはひとつでした。 それはお散歩へゆくことでした。 いつものお散歩の道を歩きます。僕はカメラを持ってきまし…

月曜日

月曜日が休みの日は映画を見に行くことにしている。 風呂に入って体を清め、服を着て外に出ると、まるでうららかな春がやってきたような明るい日差しが地上を照らしていて、半袖を着ていてよかったなあと思うのだけれども、季節感の全くない格好をしていると…

強い雨の中を駆け抜ける

駅の構内から濡れた路面が見えてた。朝は降ってなかったから傘を忘れた。 雨やどりしてる集団が響いてる。待ってるんだとすぐ分かる。 傘が無いときは隠れてるのが普通なんだろうか。静けさを待つのが。 博打が嫌いなのは努力をしても意味がないからだ。これ…

退屈について

いつもとは違う場所で仕事をすることになった本日は、退屈という気持ちを得る貴重な一日となり、退屈だなあと感じたのは2年ぶりくらいで、平素の生活において暇だとか退屈だとか全く全然感じておらずむしろ一日が35時間だったらいいのだすけど、はっきり…

フランダース

東京の町の面白いところは、町ごとに趣向があるところで、冒険者の町アンキルト、妖怪の町ネラーディス、ランウェイの町リセラ、知の町神保町、電気の町秋葉原、文化の町上野、みたいな風な、これはRPGとまったく同じである。RPGの面白みの一つに新し…

シミュレーション

「日曜日に面倒なアレがあるので、Gさんとシミュレーションしておいてよ」とモヒカン先輩はつぶやいた。シミュレーションとは最大限の準備を意味する言葉で、1から10まで誰にも質問をせず作業を終えられる状態を完了とする段取り作業だ。段取り八分とい…

夜の空気

K氏と夜の都会を歩いていると、僕は都会に住んでいるのだなと、別段何の感慨も抱かずに発見をする。ああここは故郷じゃないんだなあと考える。思えば遠くに来たものだと、そこまで考えてようやくちょっとしたノスタルジーの片鱗のような思いが姿を現す。そ…

曙光

日々の生活を、鬱蒼とした心の中で過ごしている陰気な僕ではあるが、このような者でも母がいて、父がいて、おそらく祝福されて生まれてきたのではないかと思う。両親は毎日ご飯を食べさせてくれ、寝床を与えてくれ、時には褒めて頂き、ゲームソフトやマンガ…

マッチポンプ

一年前に書いた文章が読みたくなり、フォルダを漁った。 私は一年前、こんな文章を書いていた。 『10年後の言い訳』 生きて、今日も煮物を食べている。それから明日のことを考えている。誰かが鼻歌を歌っている。アスファルトの上を鉛筆の芯のように硬い音…

かたちとたましい

池袋の街を異質な衣装を纏った人々が歩き回っている。街角に立って話をしている。様々なキャラクターがおり世界観は混ざり合いそれぞれの物語解釈が表出する。いつもの町は姿を変えて別世界になる。ハロウィンの季節になってほんのわずかな期間だけ現実には…

理想の一日

この間のこと、夜の渋谷のハチ公前でストリートミュージシャンを見学している3重の人垣に紛れて有象無象になりアイデンティティーを喪失させてくれるところは東京のやさしさです。 路傍の人になって名前のない5秒で忘れられる人になって軽やかに弦をストロ…

資格試験

今年ももうすぐ終わりそうである。 365回分ガチャを回して、キラキラのスーパーレアな一日もあれば、合成素材用の地味な一日もあって、それは当たり前のことだったけれど、好むと好まざるとに関わらず、ぱっと目を覚ました瞬間に、一日がぽんと飛び出して…

日記

必ず目覚めることが人生の課題になっている。起きる、風呂に入る、換気扇の下に立つ、スーツに着替える、髪型を整える。前髪を、気にする。鏡に映る前髪は、これは演じているようでもある。カメラ、アクション、前髪は眼球の前で演じているようでもある。監…