交換

 誕生日を明日に控えており、にわかにナーバスになっているメンタルは膝の上で激しく震動しているモルモットに似ており、それはたしか上野動物園の「ふれあい広場」様の施設の、ケージの中に隙間なくもっちりとうごめく毛玉モザイク中の一匹で、モルモットの良し悪しと言えば聞こえが良くないので、モルの機嫌と申しましょうか、体調と申しましょうか、すなわち外見から内面を直視する技を持ち合わせていなかった自分が無作為に選んでしまったその者の、そっと持ち上げた瞬間から即座に手のひらを伝わる機械的な、おそらく彼の意思とは無関係な、一種異様な興奮です。目玉をぎょろぎょろとさせ白目をむき出しにし、鼻息もごうごうと荒く、身をこわばらせて膝の上で震える小動物の彼を、僕は恐怖しました。明らかに様子がおかしいし、他のモルモット達とは違う反応をしめしているけれど、それがモルモットにとってどのような状態であるかということが分からず、ただぬくもりと手触りだけはやわらかそうな見た目のままで、何かの病か、あるいは何が原因か知らぬが極度に緊張しているのか、はたまたその日の機嫌が良くなかっただけなのか、そういう想像をこねくりまわしたあげく、隣でおとなしそうなモルモットをそっと撫でていたモル識者のM子さんに「なんだかこの人は様子がおかしいみたいなんだけど」と尋ねると、彼女は口元に微笑を浮かべたままで、壊れものをそっとテーブルに置くような口調で「他のと代えたら?」と言った。壊れているのよ。他のと代えたら?
 あの時僕は、一体何を聞かれたんだろう。
 震動する心を持て余しながら、また一年、生き延びている。