2019-01-01から1年間の記事一覧

冬の海

今年だったか去年だったか覚えていないけれど、ひとりではとバスに乗って東京を巡った時、コンクリートで作られた海岸線の一部に、まるで幻覚のようにぽっかりと砂浜が見えた。明るくて小さくて人のいないビーチだった。人々から忘れ去られてしまったような…

『スカイホープ 最後の飛行』の謎を解く

ある年末の茫漠とした昼下がり、よい気分で豆大福の写真を撮り「愚生のじんせいは10年前に終わったのだ」と呟きながらカレーライスを食べ、芥川賞について調べようとしたその時、知人A氏からラインにメッセージが届いた。これから得も言われぬ面白いゲー…

豆大福写真集

ねえ豆大福、ぼくはきみの写真を撮ろうとおもう。 豆大福「好きになさい」 豆大福「ショッキングな我輩を見よ」 豆大福「ど~~も~~! 我輩、豆大福で~~す!」 黒達磨「……」 豆大福「我輩は、野生のサイケデリック牛にも好かれている」 豆大福「知性あふ…

弱さ

職業的側面の成り行きによって愚生とY氏は年末大トリ仕事納めの仕事場管理を仰せつかった折、双方共に尋常の勤務態度とたがわず寡黙及び慎重を期して対応及び処理を進行する静謐及び敬虔な職業人たる時間の最中の心境、それはある種の祈りを帯びていた。曰…

ロイヤルミルクティー

ロイヤルミルクティーが好きだというお話。

サンタクロース現象

サンタクロースは人の名前ではなく現象の名前だった。 友人のSくんにサンタをやってほしいと頼まれ、少し考えてやることに決める。 Sくんのお子さんとは面識があり、何度か遊んだことがあったので、去年のクリスマスではすぐに正体がバレてしまった。つけ…

冬が新しいのは

冬が新しいのは、古い一年が終わるからかもしれない、と気がついた。 春が新しいのは、新しい顔が緊張して目の前に立っているからか。 秋が新しいのは、風の色が劇的に変化するから。 夏はいつも同じ夏。 昨日、今日と同級生たちと忘年会をした。名ばかりの…

小説

昨日はエッセイをまとめたので、今日は小説をまとめることにした。すっかり年末だ。 小説は全部紙の本で読んだ。小説の面白いところは、ありえないことを書いてもよいところだ。現実には起こらないようなことがたくさん書いてあるところはエッセイとは違って…

エッセイ

スマートフォンで電子書籍を読みはじめたのは、ここ一年ほどのことだった。色々考えて、電子書籍ではエッセイを重点的に読もうと決めた。 エッセイを読むのは、たぶん小説を読むことより好きだったはずで、学生の頃は小説より多くエッセイを読んだと思う。け…

歩き回る、本を読む

休日の空が晴れている。雲が多く、太陽が隠されていたため日差し自体はそれほど強くはない。乱反射した日光が空の高いところでばらばらに砕けて、だから全体的に銀色をした晴れの日に、何も予定がないということがこの上なく自由で、もう紅茶が香っていても…

現実

僕が考えたことなどは、現実の前では本当に意味のないことだ。 仕事を辞めた元後輩のM君から連絡があった。今度一緒に飯でも行きましょう。退職した方から連絡が来ることは、僕の人生の中では珍しい。大概の人とは二度と顔を合わせない。ある一時期を共有し…

大失敗をした日のこと

今日は、仕事でたくさん失敗をしたので、僕は落ち込んでいます。 落ち込んでいる時は、胃が重くなって、ことあるごとに失敗した映像が頭をよぎり「ウワーーーーッ」と叫びだしたくなります。そんなことをすると、人獣になってしまうので、やらないようにして…

散歩と写真

晴れていて、休日で、散歩です。 鳩が地面からばさばさ飛んだ。 なんだかよくわからないものが落ちていた。 ナナホシテントウムシがきれいだった。 ハクセキレイは走るのが速い。 すすきは赤みがかって体調が悪そうだった。 自然の中に突然鮮烈な色があるこ…

空中ショートケーキ

よくはれた黄色い朝 やさしさ袋がやぶれたので つくろいかたを忘れたので ごみ箱にかくしました みすぼらしくおもわれましたので さびしさを思い出せないから 台所を探してみます さらだあぶら さとう メイプルシロップ すたみな源たれ しお・こしょう これ…

映画ペンギン・ハイウェイを見たら思っていたよりもずっと夏だったので、夏の自分がどんな風だったか思い出せないことを思う。夏の空気に含まれている生き物の匂い、生と死の匂い、が夏の姿なのだとしたら、冬の風の無生物の匂い、シベリアの鉱物の匂い、は…

のらくらノーフューチャー

日常生活の中に問題意識がない。ふと気がついて、それを幸福とした。おそらく人生の中で今、もっとも幸福な時期を過ごしているのではないか。困ったこと、嫌なこと、怒っちゃうことなどが、心に絡みついて来る時、絡みついてきた悪感情を巴投げしたり、コブ…

劇場版すみっコぐらし

のけものにせものかわりもの。かわいいアウトサイダー達の心を癒やす小さな隅っこの世界。メインストリームにいられなかった彼らだからこそ面白いキャラクターになってしまうのは自明だったかもしれない。すみっコ達は隅に固まってはいるけれど、そこでじめ…

ひとつながりの過ち

電車の中が暑いと感じているのは、おそらく自分だけではなかったけれど、暑すぎて耐えられないと感じているのは、きっと自分だけで、だから電車を飛び降りたのは自分だけで、人のいないホームを歩き去りもせず、真っ赤なベンチに座りこむ人間は本当にひとり…

太陽A

冬である。北風からシベリアのにおいがする冬である。冬はいつも新鮮だ。凍っていて新鮮な感じがする。動物たちは新しい毛をまとう。もこもこになる。人間もまたもこもこになる。あたたかいダウンジャケットを着るようになるからである。東京の駅にはもこも…

ひとりきり映画祭

木曜日は、先輩のひとりが映画の試写会に誘ってくれました。僕は映画が好きで、なおかつ試写会というのには行ったことがなかったので、ゆきますと即答をしました。 試写会で上映される映画は、アメリカのアニメ映画で、シリーズの三作目。前二作は、観ていな…

普通、物体と情報

席が無かったので、空いているところに立ってスマートフォンで電子本を読むことに、最近ではすっかり感興を覚えないけれど、はじめて「えいや」と購入した一冊目、を読書する時は本当にどきどきしたもので、それは読書なのに、まるで別なことをしている気に…

鉄板の上で繰り広げられる無限のケミストリー

人生ではじめて肉バルに行った。テーブルに並べられたトンテキ400g、牛ロース、フライドポテト、オレンジジュースとビール、BGMはビルボード、騒がしい客の声、テーブルに皿を並べる店の女性の所作はうつくしく、物音一つ立てなかった。これは肉とは…

ピュアな愛の気持ち悪いポエムにしかならない愛の性質

自己啓発サークルにはまった子が砂を売っているの、と知人は言った。それはただの砂ではなく、よくわからない神様のパワーが込められた、ちからのある砂だという。そんなの馬鹿げていると思うわけ、と知人は言う。ミルクと砂糖をたっぷり入れたコーヒーを一…

最後の旅

最後の旅をしようと考えた。 鞄には着替えを少しだけ入れる。財布と携帯の充電器も。メモ帳とペンを。それから折りたたみ傘も。カメラはいらない。でもマフラーを持ってゆこう。知らない街で迷子になって、もし路地裏で冷たくなることがあったとしても、マフ…

10秒でモンスターになれる

電車に乗ってつり革につかまって読書をしていた。仕事からの帰宅中で疲れていた。左の方から大きな音がした。傘が倒れる音だ。反射的に音の方を見ると、通路に赤い傘が伏せている。持ち主であろう若い女性は、スマホを操作していた。真剣な顔をしていた。 よ…

理想の冬の一日

理想の冬の一日 会社から目的のない三連休を頂けることがあり、仕事の隙間時間等々、三連休をいかにして過ごすか計画を立てるのが好きなのだけれど、やはり時間があるのだから、時間がなければ実行が難しい・実行が面倒である行楽などを候補に上げることは多…

超次元的な愛

姉の家の小鳥の名前は「れもん」といって、名が表している通りに、華やかな黄色の羽毛をまとったコザクラインコだ。とてもかわいらしい小さなインコ。僕は鳥が好きだ。 鳥の好きなところ。羽毛が柔らかそうなところ。恐竜みたいなうろこのある脚。まんまるの…

ありがとうのきもち

そして仕事から帰り、ゲームも済んでいることだし、好きなだけ絵も描いたのだし、映画でも見ようかなと、アマゾンプライムビデオでインド映画を一本見ました。それからお風呂に入って、視界がぐるぐると回転するほど温まった後は、バスタオルで体を拭いて冷…

町と僕

北国の片田舎に生まれました。 本当に何もない小さな町でした。僕の生まれた家からは、海が見えました。海は夏になると青黒く波打ちました。綺麗なことは綺麗ですが、もっと恐ろしい感じがする海です。冬になると、空の色を映して重い灰色になりました。灰色…

秋なので

wikipediaによると、らくがきというのは、"文字や絵を面白半分やいたずらに書き記す行為 "ということになるらしいのだけれど、絵を描く時、らくがきが一番たのしいよなあと思う。 3ヶ月に1回くらい、ものすごくらくがきを描きたくなるときがあって、そういう…