小説

 昨日はエッセイをまとめたので、今日は小説をまとめることにした。すっかり年末だ。
 小説は全部紙の本で読んだ。小説の面白いところは、ありえないことを書いてもよいところだ。現実には起こらないようなことがたくさん書いてあるところはエッセイとは違っていて、もっと自由に感じる。小説には絵も音もないけれど言葉の中に世界がまるごと収まっていた。
 例によって短いあてにならない感想を記しておくことにする。

 

20190109
『象られた力』飛浩隆
 SF作品。ネットでは何故か秋山先生と比較されることが多かったので読んでみたかったのだけれど、イメージが強いところは似ているのかもしれない。シズルでウェットな表現が多かった印象。

20190118
『トラウマプレート』アダム・ジョンソン 金原瑞人
 アメリカ作品。明らかに文学の潮流にある作品があったと思う。金原さんの訳なら面白いに違いないと思って読み、やっぱり面白いとも思った。読むのが簡単ではない話もあった。でもなんといってもこのタイトルが最高だと思う。タイトルだけですこしふるえる。

20190201
『ライト・ノベル』滝本竜彦
 光の作品。光の使者になってしまった滝本先生の小説は、闇に足をつかまれっぱなしだったから光を目指したのかなあと思う。ファンタジーかつゲーム的な設定だけど滝本先生らしさは失われていない。でもなんというのだろうか、言葉で自らを切り刻むようなところが消えてしまって残念だったけれど、それは救済されたからなんだろうか。

20190206
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記宮沢賢治
 日本文学作品。賢治さんのかわいらしさと残酷さと言葉の力と、そしてキャラクター小説だということ。ペンネンネンネンネン・ネネムっていう名前をどうしたら思いつくんだろうか。妹の名前はマミミだったかモムムだったか、思い出そうとして愉快な気持ちになった。

20190208
『カイロ団長』宮沢賢治
 日本文学作品。カイロ団長がかわいそうになった。

20190422
『紙の動物園』ケン・リュウ
 SF作品。虎。すばらしく面白い短編集。小説が上手い人なんだなあと思う。常に面白い気がするし、次も面白いんだろうなあと思ってしまう。

20190425
騎士団長殺し村上春樹
 幻想小説。井戸。すぐに性交渉になるところ以外は、とても面白かった。

20190504
『アリス殺し』小林泰三
 ファンタジーミステリ作品。ブージャム。いつもと全く変わりのない小林先生の作品に思えた。つまりグロテスクで笑えるほど論理的でとても面白かった。

20190526
『熱帯』森見登美彦
 日本ファンタジーエンタメ作品。水平線を電車が走っていく映像が残っている。熱帯とは何なのかを探るパートが好きだった。ところで全く熱帯に関係のない話なんだけれど、その昔、読んだ人がたくさん自殺して社会問題になった有名な本がなかったろうか? 調べてもわからないので知っていたらどなたか教えてください。僕の夢かもしれないですが。

20190624
『ぬかるんでから』佐藤哲也
 幻想小説。ぬかるむ。2019年は佐藤さんの本に出会えて本当に良かったと思う。おそらく僕がずっと読みたかったのはこういう小説だった。とんでもない作品。意味があるのか無いのかもよくわからないような。

20190628
『シンドローム佐藤哲也
 SF作品。学校が壊れる。わかりやすく、読みやすく、普通に面白く読めた。とてもすきだ。

20190723
もののあはれ』ケン・リュウ
 SF作品。小説が上手い人なんだなあと思う。常に面白い気がするし、次も面白いんだろうなあと思ってしまう。

20190730
星の王子さまサン=テグジュペリ 倉橋由美子
 幻想小説。へびがゾウを飲み込んだ絵でしょって言いたい。すこしなきました。

20190813
『母の記憶に』ケン・リュウ
 SF作品。小説が上手い人なんだなあと思う。常に面白い気がするし、次も面白いんだろうなあと思ってしまう。

20190822
『神獣の都』小林泰三
 異能バトル作品。小林先生のこのラインはなんだかいつも笑ってしまうんだけど、酔歩する男を書いたごりごりのSF作家がライトノベルを書いたらやっぱりギャグなんだと思う。筒井さんがビアンカを書いたのと同じ力を感じる。面白かった。

20190827
『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介
 文学作品。ものすごくシンプルな話だった。筋トレをしたくなった。

20190909
十二大戦西尾維新
 ライトノベル作品。だと思う。言葉遊びとキャラクターはいつものように興味深い。その分ひとりひとりのエピソードが小さくなっている。

20190910
『レプリカたちの夜』一條次郎
 幻想小説。つまり2019年はこういう年だったんだ、と改めて僕は考えた。どちらかというとファンタジー幻想小説のよいものをたくさん読めた。ある程度シナリオが破綻しているようなのが面白い。

●いつ読んだか不明の小説

『こちらあみ子』今村夏子
『あひる』今村夏子
 日本文学作品。芥川賞を受賞されたということで、書店でよく見かけるようになった今村さんの作品が読みたかった。なんとも言えないへんてこな、嫌な感じのする、いじわるそうに見えていじわるまで行かない、独特のおもしろさ。ふわふわしてるのに緊張している感じがずっとつづく。

 

 スマートフォンのメモ帳で過去を振り返る。エッセイや小説の名前を文中にみつけるために、1年分のメモ日記を読んでいくと変なことばかり書いてある。これは本当に自分が書いたんだろうかと思ってしまうメモばかりだし、途中で書くのをやめてしまった文などは何がなんだかわからない。一生懸命映画の感想が書いてあるかと思えば人に貸したお金の金額なども書いてある。これから読みたい本の題名を列挙した直後に「甘味のティーガー戦車だ!」と何やらびっくりしたような雰囲気のメモもある。あたまがおかしくなりそうだ。
 今年は小説をあまり読めていなかった。けれど読んだ本はどれもとても面白かった。自分の人生で読んだ本を全部まとめることができればいいのになあと思った。どういう物語を読んで、どういう物語を与えて育てて、どういう物語を忘れているのか、知ることができたらいいのになあ。