エッセイ

 スマートフォン電子書籍を読みはじめたのは、ここ一年ほどのことだった。色々考えて、電子書籍ではエッセイを重点的に読もうと決めた。
 エッセイを読むのは、たぶん小説を読むことより好きだったはずで、学生の頃は小説より多くエッセイを読んだと思う。けれどいつしか小説ばかり読むようになって、エッセイの面白さを忘れてしまっていた。それがどんなものだったか思い出したいと思った。出来ることなら自分が文章を書く時の目標となるようなエッセイをみつけだしたいと考えていた。
 スマートフォンで書いているメモ日記を参照して、電子書籍で読んだエッセイをまとめてみようと思う。加えて、印象に残っている作品には、あてにならない短い感想を書いておくことにする。

20181205
『君の言い訳は最高の芸術』最果タヒ
 新時代のスタンダードなのだ、となんとなく言って回りたい力がある。

20181215
『苦汁100%』尾崎世界観
 とても人間らしい人間の姿をしたバンドマンなんだなあと思う。

20181215
『時をかけるゆとり』浅井リョウ
 面白い爆笑エッセイだと思うし、やはりエッセイは題材が大事だなあと思う。

20190123
『太陽と乙女』森見登美彦
 笑ったり泣いたりするような本ではなく、寝る前に読むために書かれているはずである。

20190228
ノラや』内田百閒
 人に薦められない作品だけれど「内田おじいちゃん」の可愛らしさとひたむきさには心打たれる。

20190305
『父の詫び状』向田邦子
 従来のエッセイのスタンダードなんだよと、言って回りたい力がある。

20190313
『3652』伊坂幸太郎
 ひとつひとつの文章がとても短かったと思う。フラットな感じがする。

20190319
方丈記鴨長明
 書いてあることは、現在のエッセイとあんまり違わないと思う。

20190320
『絲的メイソウ』絲山秋子
 ページを進めるごとにアグレッシブになっていくように思う。絲山さんて過激な人だったんだなあと思った。

20190528
『定義集』大江健三郎
 エッセイだったのだろうか? とても真面目なことが書いてあったと思う。

20190611
『降り積もる光の粒』角田光代
 大人の角田さんの、乱れない文章がすごい。

20190827
『銀河を渡る』沢木耕太郎
 読むのにものすごく時間がかかった。旅をしていない沢木さんの姿だろうか。

20191110
『赤めだか』立川談春
 落語家のエッセイというのははじめて読んだけれど、語り口もなんだか新鮮で、とてもよいもの。

20191115
『恋をしよう。夢を見よう。旅に出よう。』角田光代
 子供の角田さんの、自由自在な喋り。

20191123
アウトローのえらいひと』森永博志
 エッセイだったのだろうか? 社会からなんとなく外れた位置にいるえらいひとのこと。文体に特徴がある。

20191127
『ナナメの夕暮れ』若林正恭
 衝撃を受けた。この人の本はもっと読んでみたいと思わされる。

20191127
『男のリズム』池波正太郎
 むかしを懐かしがっている。時代を振り返る。

20191129
サブカルで食う』大槻ケンヂ
 エッセイと言ってもいいと思う。いつものケンヂさんの文章は、面白いし、なんだか落ち着く。

20191207
伊藤計劃記録1』伊藤計劃
 死とSF。ほんとうに色々考えさせられる。

20191214
『自伝エッセイ1』手塚治虫
 このエッセイが面白くないはずがないんだよなあと思った。「日常」のレベルが違うように感じる。

20191218
『はたらくおっぱい』紗倉まな
 きっとテンションが高い感じなのだろうなあと思っていたら、地に足のついたしっかりしたエッセイで、思考が厚い。

20191219
菊次郎とさき北野武
 おいらの独特の乾いた感じと、とんでもない両親のエピソード。暗くならないのって本当に力だなあと思う。

●いつ読んだのか明確ではないエッセイ

『バイ貝』町田康
 エッセイなのかはわからない。永遠に読んでいられる。笑っちゃう。異次元過ぎて好きがすぎる。

『見えない誰かと』瀬尾まいこ
 学校の先生も大変なのだなあと思いながら、時々自分の過去にもアクセスする。

『トラちゃん』群ようこ
 数々の動物たちとのエピソード。

『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』中島らも
 中学生から読んでいるのにまた買ってしまう本。あたたかさ。

『そして生活はつづく』星野源
 好きなことを好きなようにやるために苦労すること。

 以上です。


 エッセイってどんなものなんだろうって考えた。
 おそらく何種類かあって、本全体が何らかのテーマを持っているもの、自伝的あるいは日記的で各話によってテーマが異なっているもの、小説のように物語になっているもの、などがあるように思う。
 作家だけではなく、色々な立場の人がエッセイを書いていて、それも面白い点だった。面白いかどうかに文章力はあんまり関係がなく、エッセイはやっぱり題材がとても大事なんだと思う。面白いエピソードが書いてあれば大抵面白い。
 言葉の力を上手く使える人は面白いエピソードが無くても面白いエッセイになる。それはより文芸的な面白さになっていく。
 もはや面白さとは違う観点から書いているように思われる作品もある。笑えるとか、泣けるとか、そういうことではなく、学びがあるとか好奇心を満たすとか、そんなものでもなく、窓際に花を置いておくだけのような文章もたまにある。それがエッセイとして成功なのか失敗なのか僕には判断がつかないけど、そういう文章が存在していてもいいんだと思った。そういう考えや、そういうエピソードや、そういう一日が存在してもいいんだと思った。

 目標にしたいエッセイがみつかったかどうかというと、みつからなかった。僕が書きたいのはもっとこう、意味が分からないけどなんとなく分かる文で、印象に残って、エピソードがなくてもよくて、じんわり心があたたかくなるような、そういうのなんだ、と散々考えた挙げ句、わかったんだけど、僕は別にエッセイが書きたいわけではなかったのだった。書きたくないんかい、と自分で思った。でもそのことが分かってよかったと思う。今年中に後何冊かエッセイを読んだら、来年からは違うものを読んでいこうと考えた。