2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

会議室キャンプ

夜勤の業務が終わる時間帯が、ちょうど終電が無くなる時間なので、僕たちは仕事を終えたあと、仮眠室や休憩室、という素敵なものがないことによって、会社のあちこちに適当に散らばり、休むことになるのだけれど、人によってはバックヤードのテーブルの上を…

関係のない爆弾

家のチャイムが鳴ったので、ドアについているのぞき穴をのぞいた。すると魚眼レンズの向こうに悪鬼羅刹のアキラくんが立っているのが見えた。 アキラくんは「こんにちは、かわいい子羊です」と猫撫で声を出した。嘘をついているのだ。しかもすぐばれてしまう…

社会生活

電車に乗って仕事に行く。 最近はまあまあ涼しいことが多かったので油断していたけれど、今日は暑かった。 車内の冷房がなければ、干からびて即身仏に変身していたことだろう。 通勤中は、いつもスマートフォンで本を読んでいるけれど、夏目漱石のこころを少…

お返事

マシュマロをいただきました。 またお会いしましたね。あなたがいらっしゃって、僕も大変うれしく思います。 もう全部やりきったなとか、意図していたことから大幅にずれてしまって、やりたいことと違うものになってしまったなとか、そういう事態になったら…

ヤギと馬とあやつり人形

近所の公園に動物を見に行った。 ぶらぶら訪ねて行くと、いきなりヤギが喧嘩していた。 頭をぶつけ合って、首相撲をしている。 小さい方のヤギが、むしゃくしゃしているようだった。 馬はヤギの頭突き勝負を見て、舌をベロベロしていた。 この呑気な馬は、よ…

秋の風を待ちます

ペンギンあたりに「あついねえ」と話しかけたら、人間あたりに「なつだもんねえ」と言うだろう。 暑さも寒さも体力を奪ってゆき、ひいてはやる気を奪ってゆくけれども、暑いときには暑いときのよいことがあったし、寒いときには寒いときのよいことがあったか…

日曜日

正午を過ぎた頃に目覚め、目覚めてからいつもそうするように、己の心に映るよしなしごとをのぞきこんでみると、そこはかとなく図書館にゆきたい気持ちを発見するに至って、時間を無駄にしないように――というよりも一日が終わる時、後悔しないかどうかを検討…

耳栓を弄び続けた。カーテンがかかっている窓からは誰かが覗いているのではないという恐怖がごく僅かにいつもある。けれどそれはテレビの中のホラー特番のせいだと分かっている。いつも恐怖がごくわずかな影や枝の形や、思いもよらぬ突起物を妖怪に、幽霊に…

お返事

マシュマロをいただきました。 なんと言ったらいいでしょうか、ポジティブな「なんでもないです」と、ネガティブな「なんでもないです」があると思うんです。どちらにせよ、言いづらいことだとは思うのですが、もし良かったら、言えそうな時に言ってみてくだ…

青空

The Birthdayの『青空』を爆音で聴いていた。 二回目の夏休みの最後の日は温泉に行こうと決めた。 温泉といっても、近所のスーパーの前から送迎バスが出ている感じの、町中にある温泉だ。 本当は秘境にある温泉で、日本猿と一緒にお湯に浸かりたかったのだけ…

一人言

一日に映画4本約8時間見たのち、生茶を飲みながらふと一人言について考えている。 一人言を言う人は、僕はあんまり好きではないけれど、考えてみると自身ごくたまに口にするようで、例えば駅のホームがなんだかやたら暑い時「うっ、暑い」と小さな声で言っ…

さぼてん

フラットでありたいと思う時、心が山の上にいるのかもしれない、あるいは谷の底にあるのかもしれない、山の上にいる時の景色は空ばかりで何もない、見渡す限リの景色はみな遠く、さびしさがあるかもしれない、あるいは谷の底にあるときの景色は全部見上げる…

人間の子

月曜日が休日の時は映画館に行くことにしていて、それは一時期すっかり習慣のようになっていたけれど、上映中にがさがさと不穏な音が鳴り続ける事件が起き、映画館というものの在り方について深く考えさせられた僕は、一度距離を置こうと考え、時間をかけて…

南の島

南の島に行こうと思った。 南の島についてからは、空港で借りた原動機付き自転車に乗って移動した。 はじめて運転する乗り物だったので、間違いなく死ぬと思った。 ブレーキすると体が前につんのめるし、アクセルを開けると体が後ろに引っ張られて腕がびーん…

コラーゲン

電車内にて、空席に座った瞬間「コラーゲン……」と呟いてしまい、自身の限界を知る。 まったく脈絡のない一言であった。 最近ダウンロードしたゲームアプリを起動し、画面をタップすると生命力がごんごん溜まっていった。生命力が溜まると魚やサンゴを作るこ…

くたびれた犬小屋の

体の具合がくたびれた犬小屋のような感じの休日。 ふらふらと電車に乗って少し眠った。 銀座の近くの駅で降りて面白い絵を見た。 この世のものとは思われないものばかり描いた絵で、図録を買った。 レジの係をしていた方が「作家さんにサインを貰ってくださ…

余裕

夏休みの最中、仕事に行くことになっていた僕とゴーレムくんを待ち受けていたのは、圧倒的な余裕だった。物事の大半が上手くゆく魔法の言葉、それが余裕だった。つまり僕とゴーレムくんは余裕があるから失敗をすることがなかった。なぜなら余裕だったからだ…

手刀で夜ふかし

空手家がビール瓶の細くなっているところを、手刀で叩き切る技があるけれど、その真似をしていたら寝る時間を過ぎていた。 技への理解は深まったけれど、いつもどういう文章を書いていたか、まったくわからなくなった。 今週のお題「人生最大の危機」

草美ちゃんの夏休み

草美ちゃんはこう考えていた。「夏休みになったら、TDLに行きたいわ。あるいはシドニーでBBQをするわ。もしくは軽井沢でNKYをするわ」 そういうことが出来たらさぞ素敵だろうなと思い、草美ちゃんはお母ちゃんに相談した。「お母ちゃん、夏休みにな…

お返事

マシュマロを頂きましたので、お返事いたします。 メッセージ、ありがとうございます! マシュマロの設定ミスの件、幾人かご迷惑をおかけしてしまいました。 ご指摘頂いたこと、感謝いたします。 そういう「間違っていますよ」っていうこと、たぶん言いにく…

神とダーウィンとヒッチコック

夏は図書館だと思っていた理由を、図書館の窓際の席で不意に思い出し、エアコンもない部屋のベッドに転がりながら一日中本を読みふけり、気が向くと窓の外を眺めて過ごした、これっぽっちも夏めいていない夏休みの孤独が、今もまだ心の片端に熾のようにくす…

おいしいミックスジュース

知り合いのお宅でミックスジュースを頂いた。 いつも美味しいジュースなので「これ、いつ飲んでも美味しいですね」と伝えると、「それね、最初に入れるジュースが美味しかったら、なんでも美味しいんだよ」と教えてださった。 最初にりんごジュースを入れた…

お墓参り

お墓参りすることにした。 JR巣鴨駅で電車を降り、大塚に至るまでの道のりを歩く。 36℃真夏日の炎天下。溶け出してるのはアスファルト。明瞭さにとぼしい思考もさらにゆるくなっている。 巣鴨と大塚の駅は山手線で隣同士。線路沿いの道を歩いていくと迷…

いちごジュース

むき出しの木と、煉瓦とが組み合わされた空間を、橙色に染めるひかり。 前髪の濡れたウエイターが、カウンターに肘をついて、コーヒーを淹れている眼鏡の男性と、跡切れ跡切れの会話をする。 見えないスピーカーから、甘い弦楽器の音色を混ぜた、歌がこぼれ…

VTuberの言葉と愛

とあるVTuberが、視聴者の質問に答えるコーナーで、「僕は自分を好きになれません。どうしたら自分を好きなれますか」 という意味の質問を受けて、こんな風に答えた。「自分を好きな人に、もっと好きになってもらえるようにすれば、自分が好きになれるはずで…

聖地巡礼

駅から家に向かって歩いている時、頭のてっぺんがじりじりと熱いのでふと思い出したのだけれど、数年前に聖地巡礼をしたことがあった。あの時も夏だった。 とても好きな小説があって、舞台は少し田舎の、山に囲まれた架空の町だった。 インターネットを駆使…

真夏の図書館

夏といえば図書館だ。 しかし、夏と図書館を結びつけて考えるようになったきっかけが、どうしても思い出せない。 どうして夏といえば図書館だ、と僕は思っているのだろうか。 夏にうってつけの場所は、他にもたくさんあるはずだった。 たとえばプールだった…

いみのないうつくしいもの

意味は無いけれど価値はある。 そういうものがきちんとある。 意味のあるものってなんだろう。 それはきっと、お腹が減っている時のビスケットだろう。 喉が乾いている時の、麦茶だろう。 おばあちゃんがくれた黒飴だろう。 夜勤明けのベッドだろう。 敵のい…

世間話

皆さん、こんばんは。 僕は、今日は世間話をしたいと思います。 今、僕に必要なのは世間話という視点なのだろうな、と、夜勤の休憩中、コンビニで買ってきたゆで卵を食べながら考えたわけです。 ゆで卵と言えば板東英二さんですが、と、ゆで卵きっかけで板東…

易しいラブストーリー

かつて貴子だった肉体は人生と空想の二重生活を送っている。「はあ」肉体は慣性の法則に依って空気塊を噴射する。「我が過酷なる労働の日々よ、幾ばくの金銭と束の間の安息を得て未来に何を望もうというのか」 荒涼とした獣臭が肉体の頬を撫ぜる。不意に今は…