ヤギと馬とあやつり人形
近所の公園に動物を見に行った。
ぶらぶら訪ねて行くと、いきなりヤギが喧嘩していた。
頭をぶつけ合って、首相撲をしている。
小さい方のヤギが、むしゃくしゃしているようだった。
馬はヤギの頭突き勝負を見て、舌をベロベロしていた。
この呑気な馬は、よく舌をベロベロしている。
鼻の前に手をやると、大きな鼻穴で匂いをかぐ。
それからまたベロベロやりだした。
ヤギと馬を見たあとは、図書館でピノキオの絵本を読んだ。
ピノキオの話をきちんと読んだのは、今日が初めてかもしれない。
ピノキオは大変悪い子だったし、ゼペットじいさんだって善人ではなかった。
言葉をしゃべるコオロギと、青い髪の妖精以外のキャラクターは、みんなどこか歪んでいるようだった。人間の汚い部分や、弱い部分が、皮肉をこめて描かれていた。
ピノキオは約束や決まりをすぐに破ってしまい、人に受けた恩も秒で忘れ、いつも痛い目にあって、もうしませんと誓うのに、それもまたすぐに忘れてしまう。
彼は欲望とか、怠惰とか、傲慢とか、そういうものの傀儡だ。
不思議な大冒険を経て、真っ当な人格を手に入れた時、ようやく人間の体を与えられる。
カルロ・コッローディさんが言いたかったのはたぶん、約束を守ったり、決まりを守ったり、頑張ったりできるやつだけが人間で、そうじゃないならあやつり人形か動物だよ、ということなんだろうなあと思った。僕もロバにならないようにがんばろう。
図書館のあとは、いつもの10キロ散歩コースに向かっててくてく歩いた。今日は野球場にもほとんど人がなく、ライダーもランナーも少なかったように思う。歩きながらスマートフォンで本を読むことが容易だったので、にのきんスタイルで歩き回ったけれど、運動によって脳が活性化した状態で読書をすると眠くならないのでとてもよい。アウトドア読書の技術をまたひとつ編み出してしまう。喉が乾いたらかばんからポカリを出して飲む。暑い日に歩きながら飲むポカリスエットは甘露のごたる。テレビCMみたいで少し笑うこともある。