夜のど田舎の森の中の道を自転車を漕いでいた。たぶん月は出ていたから、情景は全然絶望を意味していなかった。冬で、肌がぴりぴりするほど寒かった代わりに、空気は凛と引き締まって適度な距離間でよそよそしく、私はきちんと世界に一人で存在している感じ…
7月22日でこのブログは1周年を迎える。 1年は続けるつもりだったので、僕は満足です。 更新したりしなかったりだったけれど、まあ、がんばったんではないかなと思う。(実力不足以外には)特に悔いもないので、あとひとつ記事を書いたら、このブログの…
『ロボットくん』 「あんたの誕生日プレゼンツに、あたしあ高価な小銭入れを考えているんだけれどね」 姉がおっしゃり、僕は考える。(高価な小銭入れ……!? 高価な小銭入れっていうものはだな、僕に言わしたら、この世で最も「使わなくなる道具」のしとつだ…
(7月6日) いつか来るものだと思っているもののひとつに死があって、僕は確実にいつか死ぬのだが、いつか死ぬということについては納得したつもりでいたし、海で溺れてしまった時や、車で事故を起こした時に、そして身近な人がたしかにはっきりと死んだ時…
誕生日を明日に控えており、にわかにナーバスになっているメンタルは膝の上で激しく震動しているモルモットに似ており、それはたしか上野動物園の「ふれあい広場」様の施設の、ケージの中に隙間なくもっちりとうごめく毛玉モザイク中の一匹で、モルモットの…
どうも幾分疲れているようだった。疲れているだけならまだしも、頭の具合が良くない。思考のバランスを欠いている。そのようなよくない状態が長期に渡って続いており、休息の仕方も忘れる。睡眠が一番の薬だと判ってはいる。けれど眠れない時期も突然やって…
言葉は言葉を呼ぶ。けれど言葉はあまりイメージを呼ばない。イメージを呼ぶのはイメージだった、と僕は思い出した。一日をぼうっと過ごしていると、言葉を持たないイメージがくっきりと脳に浮かび上がることがある。それはすごくどうでもいいことだ。そうい…
非常にたびたび街角で、誰も見たことがないステップを踏みます。 大した用事ではないのだけれど、七月の記念のために田無に向かう。 地下鉄を乗り継いで都営大江戸線へ。 大江戸線の窓も、ほかの路線と同様に開いている。換気のためだ。 しかし僕がよく使う…
傘をたたんで、バスに乗った。 乗客は三人だった。右後方のひとり席に老人。最後部の五人掛けの席に小学生とおぼしき女の子が二人。 僕は、床がタイヤの形に盛り上がっているひとり用の席に座った。 ポケットから携帯を出して、森見さんのエッセイを読みかけ…
下手の考え休むに似たりというので、少し休みます。 自分ばかり仕事をしているような、なんだか仲間たちが何もやってくれないような、そんな気持ちになることがたまにあって、そういう時は決まって忙しい時だ。 当たり前のことかもしれないけれど――暇な時に…
今日は始めて地元の銭湯に行った。 温泉ではなく、銭湯だ。 この町の色々な場所を見ておこうと思った。 それに、あんまり人もいないだろうなと思っていた。 最高気温は28℃。 ひどく暑かったから、湯に浸かったら気持ちいいだろうなと思いながら日差しの中を…
今日も出勤だったんだけれど、会社には本当に僕しかいなかったし、僕しかいないという事態は以前から通常の業務に組み込まれていたことだから特にどうのこうのと考えることはないんだけれど、僕がひとりで放心しているだけなのに業務に支障が出ないという点…
ひさしぶりにモヒカン先輩の顔を見た。 緊急事態宣言前と比べても目立つ変化はなかった。 僕の姿にもあまり違いは見られなかったろう。 ひさしぶりに顔を見たにも関わらず、そもそもひさしぶりという感じも薄い。 モヒカン先輩とは事あるごとに電話で情報共…
同じ場所に留まることで思考が固定され広がりを欠き刺激の減少により欲望が減衰し他者と自らを相対化しなくなるため自我が希薄になり内省的かつ内向的な側面が助長され小さな生活サイクルの中にいるセルフイメージが根付き頭があたらしい発想をやめ円環の理…
触れてもいないものが音を立てる。 あれはなんという現象なんだろう。 会社の休憩室で寝ていると、どこからともなく「カチッ」と音がすることがある。 ボタンを押したような音。「ミシミシッ」と鳴るのはビルが風で揺れているからだけど、「カタン」と何かが…
パソコンの前で本を読みながらYoutubeを見ていたんだ。 面白い本だったので、Youtubeの方はほとんどBGMとなっていた。 文字を追うことに疲れたので本を伏せて何気なくモニタに目をやった。 AさんとBさんが話していた。「Bさんはほんとに面白いですね!」…
スマートフォンの天気予報アプリを見ると最高気温は26℃らしかった。外に出ない方が安全だろうと思われた。もし外出したら身体が溶解するかもしれない。まだアスファルトの染みにはなりたくない。たわごとを並べていたい。楽しげな言葉がころんころん出てく…
そろそろ夏が来るから、夏を好きになろうかな。 音楽を聴いているとき、この曲は夏だなあと思うのが何個かある。 夏で、その上で夏が好きだなあと感じさせる曲。 そういうのを自分なりに集めてみようかな。 KREVA『イッサイガッサイ』 毎夏一度はイッサ…
モンスターエナジー二本とドライソーセージを一本食べた。 ものをほとんど食べない日がわりとあるように思う。 何故そうなったのか、理由はふたつある。 ひとつは、物を食べると疲れてしまうから。 もうひとつは、父が「時々は一日くらい何も食べない日があ…
我が家には本棚が三台ある。 ひとつは小さい本棚である。小さい本棚には古い本が並んでいる。新しい本を入れる余地はない。ぎっちりである。どうして古い本が入っているのかというと、それはわからない。なんとなく古い本を入れた方が良いような、こぢんまり…
従妹の家に住んでいた祖母は、僕の姿を見かけると黒糖飴をくれた。 真っ黒の地に赤い丸が描かれた包みのデザインが、強烈な甘さと共に頭に刻み込まれている。 あまりにも甘いので、僕はクロアメ(そう呼んでいた)が好きではなかった。 だから祖母がクロアメ…
在宅で、かつ夜勤という不思議な状態が起きる。 いまだ経験をしたことがない業務だったので密かに緊張している。僕はいつも大体緊張しており、その状態を緩和、あるいは解消することが大きなテーマになっていた。今のところ最も効果があるのは一度死ぬこと、…
彼は人間ではなかったんだね。マスクを脱ぐまでは。 姉は肩にインコを乗せてアイスコーヒーを飲みながら僕の前に座っている。「昔ねすっごい好きなキャラクターがいてね」と彼女は言う。「かっこいいと思って、グッズとか集めて、セリフとかもすごい良いのよ…
今日は日曜日で、会社には僕しかいませんでした。 なので、良い機会だと思ったので、先日無くしたペンをもう一度探すことにしました。 sindou.hatenablog.jp 休憩室の床すれすれに顔を近づけまして、小さいLEDライトを使って、棚の下の暗闇を照らします。…
たしか二千円くらいだったと思う。 出社したばかりで、休憩室に向かった。手提げカバンをテーブルに置いて内側のペンホルダーから抜いて手に持った。 そこまではたしかにはっきりと覚えている。でも次の記憶となるともう怪しい。「るるる」と作業部屋の電話…
非常事態宣言の発出直後くらいの事だったと思うけれど、インターネットニュースのとある記事に、宣言下での過ごし方の例が記されていて、その中のひとつに「人の少ない場所を散歩しましょう」と書かれていた。誰でも考えることなのだなと思う。 大きな川の土…
在宅業務が本格的に始まって、ベッドの上から仕事が始まってしまう真面目さが、おそらく今後負担になると思われたので早めに手を打とうと考え、「おはようございます」と上司にメッセージを打った後、ベッドに転がって小説を読み始める。 会社で仕事をするこ…
なにもしなくても完璧な一日がある。 こんなふうだった。 まずあさひがやさしい。 やわらかいぬのみたいなかんじがする。 風がいいにおいだ。 すこしあまい。こうきゅうな香水にだってまねできない。 のみものがおいしい。 肩の力がふっと抜けて、しんぞうが…
皆様、こんばんは。 今日は何をしましたか? 僕は働いていました。聞いてください。なんと13時間も働いたのです。 きりぎりすだったら死んでいます。 一日の半分以上を会社で過ごすと「自分はなんのために生きているのか……」 わからなくなってきます。そう…
ぼんやりとした理想を抱いて結局は未来(未定=不定)であるところの個人的な五日間に希望的計画を立てようと企てる。 I guess 未来なので理想の居心地はいい. 本当(自己像ではなく実像)は心根が日向にあるのかもしれない僕は、計画を立てようと考える時、…