ありあまるから(不自然な)レトリック

 ぼんやりとした理想を抱いて結局は未来(未定=不定)であるところの個人的な五日間に希望的計画を立てようと企てる。
 I guess 未来なので理想の居心地はいい. 本当(自己像ではなく実像)は心根が日向にあるのかもしれない僕は、計画を立てようと考える時、計画を遂行することによって自分の利益が損なわれるかもしれないと思いながら計画を立てることが無くて、そういう考え方は一般的なのだろうか、一〇〇人くらいにインタビューしてみたい。計画を立てるとき、楽しい気持ちで計画を立てますか? それとも自分によくないことが起こるかもしれないと思いながら計画を立てますか? どちらがよりたくさんなのかを知ることによって、僕に特別な得があるのかといえばこれは無いのだけれども、ではなぜインタビューをしたいのかと考えてみると、自分の考えが本当に正しいのか、判断の根拠を得て安心したいから(依ってHuanなのだろう)に他ならない。
 では考えとは何かというと「すべての計画は明るいのではないか?」ということ。この考えが善性の神にAgreementされた暁には、すべて人類の未来は明るい。何故なら計画というものは、未来(未定=不定)の上にしか存在し得ないのだから。
 計画を立てるとき、自分が失敗するように計画を立てよう、なんて考える人はいないと思っているんだ。
 あるいは、自分が失敗するように立てた計画は、I think 自分にとってなんらかの益があるからそうする.
 すべての計画はポジティブで、明るくて、前向きで、それ自体が楽しいものなのでは……?
 たとえどんなにずさんな計画だろうと。結果がどんなものであろうと、計画自体は(自分にとって)悪いもの(自己の利益を損なうもの)ではありえないのではないか。結句、計画が心や未来に与える影響そのものと計画の目的に対する結果を、切り離して考えるべきだということも示唆したい。計画は包丁で、結果は殺人事件だと思う。

 個人的な希望的五日間の初日。
 まったく計画通りに自らのベッドで目覚めた僕は太陽の存在を左足のつま先にちらちらと感じている。遮光暗幕の隙間から大地消毒光が漏れている。光というものは案外すばしっこく、色々な隙間から侵入してくる。完璧な暗闇を作るのはちょっと難しい。麺麭銅鑼の箱にだって希望があったものな。目を閉じていてさえ瞼を透過するまっすぐの光の性質は、赤ん坊の泣き声や、いつも笑っている人のこちらまでにこにこしてしまう不思議な力等と類似性がある。
「さあ僕のファンキーでノスタルジックな一日が始まるんだ。シスコーン(コーン・フレイク)を白い陶器の皿に移した時のからからというさわやかな音。そこへ注がれる乳脂肪分の高いこくのあるミルク。スプーンを添えてベランダの椅子に座って湖の自然を眺めながら朝の食事をしよう!」どこからともなく流れてくるドヴォルザーク交響曲第九番第四楽章!
 毛布の魔手を運よく逃れ、ベッドの横で白鳥の首(伸びる)や、またはコザクラインコの首(すごく伸びる)、猫の胴体(すごく伸びる)のように僕が伸び(あまり伸びない)をし、部屋の空気が1年くらい着ていてるTのシャツライクにちょっとだけ古くなっているのを感じた為に窓を全開にした時、『重力ピエロ』の書き出しが思い浮かんだから、書いてみると、夏が窓から飛び込んできた、そういう感じで、ほんとうにその日は、誰が見たって立派な夏だったものだ、町が鮮やかに発光している。ビビッドな色遣いでぎらぎらと形を主張している。明確な明度や彩度や照度やなんか、たぶん僕の視覚受容器は知らないけれど、なんて暑苦しくて、生きているみたいな言葉のいらない街。でも風は柔らかく人見知りをしてまだ少しシベリアを懐かしがっていた。カーテンがふわりと膨らんで前髪がすすすと揺れる。そのため寝ぼけた頭が「ふふふ」となった。休日が始まる瞬間というのは、いつもレベルアップのファンファーレが鳴っている気がした。そして空気酩酊朦朧状態のまま椅子に座って半壊パーソナルコンピューターの電源スイッチを押す。習慣的なパスワードを打ち込んで実家のようなデスクトップ画面を表示させ親友のようなインターネット・ブラウザを起動。youtubeで無料公開中のTRIGGERアニメ作品劇場版『宇宙パトロールルル子 初恋BIG版』を視聴し始めた。黄金週間に合わせて劇場版アニメを無料公開するTRIGGERのやさしさというのか、遊び心というのか、殺人ウイルスがきらめく夏の空気に混入している世、インドア派が陰に日向に(主に電子的ネットワークを)飛び回ってステイホームを楽しくする助けがしたいですという意思、商機とブランディング、人を喜ばせる行為を考えた結果、主人公感、しかと受け止めました。それはうれしいですだし、僕もそうなりたいと思いましたかもしれない。
 理想の通りにはならなかったけれど、この五日間のあいだ、少なくとも一日に一度見ようと計画した劇場版アニメを僕は今も見続けていた。

 

お題「#おうち時間