イオンに行きました
同じ場所に留まることで思考が固定され広がりを欠き刺激の減少により欲望が減衰し他者と自らを相対化しなくなるため自我が希薄になり内省的かつ内向的な側面が助長され小さな生活サイクルの中にいるセルフイメージが根付き頭があたらしい発想をやめ円環の理の中で既体験をスキップする処理を脳が実行するので時間の速度はまばたき一回につき体感三分でカップ&ラーメンはもうロング・ロング・アゴー・伸びている・ロング・ロング。
我慢していたわけではないにせよそろそろよいのではないだろうかという見切り発車的仮説を経てオンザベッドにて行先を模索した際上記の円環理を認知し思考すらもあてどなく脳裏を彷徨っている状況はしかし以前から抱えている小さな問題のひとつでありきっかけを経て思考上に顕在化した「目的の欠如」が社会情勢と合致をみたことでむしろ自分自身が社会現象に含まれていることで安心を得たいがために理屈バーナーで論理溶接をして捏造的帰属意識のマスクで無意識のうちにロンリー考察を覆い隠してしまいたかっただけではないのかと自問自答が結局のところ尋常の自分を召喚することになった。
長々と意味のわからないことを書いたけれどかいつまんで言うとイオンに行くことにしたのだ。
家を出たのは14時で町にはにわか雨が降っており新品の靴ひもがほどけやすいスニーカーは不器用に雨に打たれ電車に人は少なく人が少ないという点においてのみ今の状況が続いてもいいという考えが禍の当初より出勤出社を続けていた自分の中に芽生えいかんせん東京の街は人間が凝集し過ぎ酸素不足の懸念により音声のヴェロシティーも控えめ気軽にサルサロックを踊ることもできず犬に話しかけるのも人目をはばかってということで山出しの未開人は肩身の狭い思いを強いられながらデジタル山菜をタブレットで採集したのち大企業マップに打ったピンめがけて瘴気の中を時速4キロで疾走してしまう。
一階出入り口横のガラス張りのタリーズ店内に座る有閑の諸君らがバガボンドの風情で喜悦の感にほほ肉が盛り上がりこころ震わせて傘を畳みエスカレーターにて三度上昇を繰り返した折眼前に書店が繰り広げられ無目的の結末はいつもそこにあり再会の感動があり帰郷の安心があり形のないものを求めるとき形のない答えでしかそれに応えることができないのではないかと結論をこしらえ厳選した本を二冊購買して鞄に安置し電車を使ってすみやかな帰宅に成功した。
外出していたのはたったの二時間だけれど心の目が開くのには一秒もかからない。