ひとりきり映画祭

 木曜日は、先輩のひとりが映画の試写会に誘ってくれました。僕は映画が好きで、なおかつ試写会というのには行ったことがなかったので、ゆきますと即答をしました。

 試写会で上映される映画は、アメリカのアニメ映画で、シリーズの三作目。前二作は、観ていなかったので、amazonのプライムビデオで観てみようと考えました。タイトルは、ヒックとドラゴンといいます。

 一作目は、とても面白かったので、二作目も観ました。二作目も面白かったです。その晩は眠って、朝になって、携帯電話を観てみたら、先輩からメッセージが届いていました。どうしても外せない用事が入ってしまったので、申し訳ないけれど、今日は中止にしますとありました。わかりましたと返事をしました。僕は、突然やることがなくなってしまって、30分くらい、宙を見つめて過ごしましたが、宙を見つめたまま一日を終わらせてしまったら、人の形を保てなくなると思ったので、ひとりきり映画祭をやることにしました。木曜日と金曜日は、全力で映画を見続けるぞ! と思いました。

 ひとりきり映画祭は、僕の部屋で行われました。カーテンは閉ざし、部屋の明かりも真っ暗にしました。パソコンモニタだけが煌々と光を灯し、異界を覗く窓になりました。右手には麦茶、左手にはソーセージを装備しました。それから映画を観ました。一作目はリドリー・スコットブレードランナー、二作目はバーホーベンのトータルリコール、三作目はスピルバーグのマイノリティーリポートを観ました。こういう企画をやる時は、テーマがあった方がいいなあと思ったので、そのようなラインナップにしました。三作とも原作がPKディックで、古のSFの感じが、これは映画好きのような感じがしていいなあと思いました。三作とも、人間のアイデンティティーが脅かされるお話なので、観終わった後、自分は一体何者なのか、何のために生まれてきたのか、そしてこれから何をすべきなのか分からなくなり、アイデンティティー・クライシスに陥ったので、ミッキーローク主演のレスラーを観ました。レスラーは、おじいちゃんレスラーの話ですが、とても悲しいエピソードが多いのですが、最終的にはレスラーでありたいという存在の再認識のお話なので、元気になってきます。

 元気になった僕は、リビングで空手チョップの練習をしました。空手チョップをしていると、だんだん自分が強くなった気持ちになって、いい気分になりました。このまま20年間ずっと空手チョップの練習をすれば、きっと空手チョップでどんなものも断ち切ることができるようになるはずだ、と思うと、暗い未来すらも切り開いて、空手チョップにより明るい未来が見えてきましたが、手が疲れたので5分でやめました。

 それから、今までの文脈に全く関係のないピカソの映画を観ました。ピカソの映画は、ピカソ本人が絵を描くだけの、いわゆるメイキングの映画で、これは絵の上手い人がyoutubeにアップするのと全く同じ趣向なのが、今の僕にはめちゃめちゃ面白くて、ピカソのイラストメイキングってすごいなあと思いました。シナリオとかは無いので、本当に絵ができあがっていくだけなのですが、劇中でピカソが「次はもっと面白いの描くよ」みたいなことを、にこにこしながら言うのが、なんだか感動して、少し泣きそうになりました。ピカソがあまりにいい人そうで、しかも、難しい顔をして描くときあるけれど、明らかに楽しんでいるのが分かるんです。この人は本当に絵を描くということがこんなにもずっと歳とっても大好きでしょうがないんだ、と思ったらじーんとしてしまって、絵はすてきなのですけれどもそれ以上に、なぞのパワーがありました。ピカソのパワーを貰って寝ました。

 金曜日は2012年にリメイクされたトータル・リコールと、アメイジングスパイダーマンと、アメイジングスパイダーマン2を観ました。三作ともとても面白かったです。それとは関係なく、ご飯を食べながら、タカラジェンヌになりたい、というテレビ番組の録画の動画を観ました。僕はとても穏やかな人間なのですが、厳しい現場を見るのが好きで、軍隊の訓練の様子とか、サバイバルしている人の動画とか、スラムのご飯とか、などを見ると気持ちが引き締まって僕も頑張ろうとなるので、見るのは好きなのですが、宝塚にも同じようなことが言えるなあと思いました。とにかく目標に向かって頑張っている人のエネルギーというのは、きっとよい影響を持っているのだと思います。宝塚を今度見に行きたいなと思いました。

 まだ金曜日は、少し残っているので、これから映画を見たいなと思っています。ミュージカル映画などはきっとよいでしょう。