最強の日常の日記
王子様とお姫様は幸せに暮らしました、の暮らしました部分が、今ここ。
見上げても見下げてもきりがないので、日常は最高で最強でした。
面白い映画の話とか、きれいな花の話などをする。
早朝5時30分、町で一番の札付きのワルのカラスが道路の真ん中でなんかをつっついていた。
たくましい体躯。おっかない嘴。カラス界の竹内力は、すぐそばを車が通っても気にしない。むしろ車が避けて通るくらいの迫力で、なんかちっちゃいものを一生懸命つついていた。
種族は違っていても立派なものを見て感心した。
時々ほんとうにふてぶてしい態度の野良猫がいたりするけれど、彼らの超然とした態度には見習うべきところが多いように思われた。
どこかにダンゴムシのチャンピオンなどもいるのだろう。
雀の親分も。地上最強の兎も。かもめのジョナサンも。
おばあちゃんの自転車の荷台に、女の子のキャラクターのぬいぐるみキーホルダーがぶら下がっている。
ワカメちゃんみたいな髪型をしていて、ピンク色のワンピースみたいな服を着て、なんだか目つきの悪いキャラクターで、ヴィレッジヴァンガードとかにグッズが置いてあるのを見たことがあるタイプの、新しめのキャラクターだったので、社会と人だと思った。
僕からきれいな花みたいな匂いがしている。
先日、日常用品を買い求めた際、使ったことがないコンディショナーを購入したのだけれど、すさまじく甘い香りがする。
カスタードクリームみたいに粘度の高いタフな甘い香りである。
男性がこれほどまでに甘やかなわけがないから、電車で隣に乗り合わせた人などは近くにハリウッド女優が現れたのではないかと周りをきょろきょろしていた。
電車を降りると無数の蝶が寄ってきて、頭がカラフルになった。
蝶を取るためにムクドリやセキレイが飛び交っていた。
更に鳥を取るために猫やハクビシンが寄ってきて足元をぐるぐるしていた。
小動物を狩るためにアフリカの山奥の部族が草むらの影で弓を構えていた。
山奥の部族を撮影するためのテレビ局のクルーがカメラを構えていた。
カメラと部族と小動物と小鳥と蝶とが入り乱れた現場を通り掛かる人々はみんな映画の撮影だと勘違いしてハリウッド女優を探すためにきょろきょろしていた。
昨晩、クリント・イーストウッド監督・主演の映画を見た。
ずっと前に何度か見たことがある映画で、現役をとうに過ぎた老人たちが、人工衛星を修理しに宇宙に行くことになるお話だ。
公開は2000年で、クリント・イーストウッドはこの時おじいちゃんだ。不思議なことだ。クリント・イーストウッドは、2020年の現在もおじいちゃんだからだ。1992年の映画を見ても、やっぱりクリント・イーストウッドはおじいちゃんだ。全く歳をとっていないというか、時が止まっているかのようだ。
なんといえばいいのか、クリントさんは自分がアメリカのジジイ(おじいちゃんというよりは頑固ジジイ)であることを、誇りに思っていると思う。若いもんには負けんぞみたいな映画が多いのは、大いなるアメリカン・ジジイイズムが彼を支えているからだろう。そういう気概は高齢化社会の世の中で、より需要を増すかもしれない。十代と同じくらいノーフューチャーなジジイ達が宇宙に飛び出して行くのをみて、月に向かって核ミサイルでぶっ飛ばされるジジイを見て、なんてパンクな映画だと思った。