ざっくばらんに

『よい小説』

 その作家さんの言葉はよい意味でとても下品で下ネタもばんばん飛び出し、高尚なところが全然ないし、登場人物は貧乏で明るくて騒がしくて一生懸命で、等身大の作風はリアルではないかもしれないプロットを飛び越えて、この日本のどこかにいてもまったくおかしくはない、むしろどこかで見たことがあるような親しみを感じて、その全体が文字を通して、きちんと別世界に、強固に接続されており、エンターテインメント小説ってそういえばこんな風だったなと僕は涙を流しながら、本当に声に出して笑ったり、ベッドの上を転がったり、速度を上げ続けるドライブ感にめまいがしたりして、その背景にゼロ年代ラノベを思い浮かべたり、作品の裏読みをして作家さん自体の物語を想像したり、ラブコメ道を16年も貫き続けた彼女を本当に天才だと思ったりした。この作品に関して感想文を書こうと3回試みたけれど僕には書けなかった。あまりにも言いたいことが多すぎた。ただ良い小説だったと言いたいし、それ以外の言葉はあまりに無駄が多すぎて別物になってしまった。おそらくこれからもゼロ年代ラノベの濃密なギャグを織り交ぜた作風はまだまだ続くのだろうと考えると思わず胸が熱くなる。もう彼女みたいに笑える小説を書ける人はいないんじゃないかと思う。最後の生き残りなんじゃないかと思う。だから生き続けて走り続けてほしいと思う。いつも物語が激しく動きだす時僕はいつもゆゆこさんが机の前で泣いたり笑ったりしながら読者の襟首をつかんで決して離さないまま「もっと面白くなるから!」って言っているような気がする。その声はものすごく大きくて現実の雑音なんか退屈なんか絶望なんかあっというまに消し飛んでしまう。僕がただの庶民だからこそゆゆこさんの書く小説は毎日のご飯と同じ地平で僕を救い続けている。

『いいからしばらく黙ってろ!』竹宮ゆゆこ

 

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『まだまだうたたね』

 われながらいかんとは思うのですけれど、うたたねがとまらない。
 いかんともしがたい。帰宅してスーツをぬぐでしょ、靴下を洗濯機にいれますよね、そいから部屋着に着替えるでしょう、こころが春雨みたいになるのは当然至極でがしょ、そんでねベッドにごろんてするでしょう、えもいわれぬこうふく感がほわほわくるでしょう、くものうえのようなね、そしたらわけもなく天井をみつめてね、表情はまがおですがね、もう百年ばかりくものうえにいようかななんて思うてしまうのですよ、極楽とんぼがぷかぷか飛んでおってね、このよのなかは平和がみちみちているなあて、あたまの中身がじんわりじんわりあたたかい、そんなしずかなこころの花畑が、じつは自宅のベッドの上にあるとは、ぼかぁ知らんかったですよ。なにもしない時間というのは、なによりもぜいたくなんだなとも思います。

 

 

『狂ったノート』

 この間、怖い映画をみました。
 過去に起きた惨殺事件を題材にした映画の撮影をしていると、なんだかおっかないことが起きて、最後には主人公がおかしくなってしまうという、こわいものです。
 その映画の中に、狂った博士みたいな人が出てきます。
 むずかしい研究をしている博士です。
 その博士の研究ノートが、ちらりと映し出されるのですが、これがとても狂ったノートでした。
 同じような文字がたくさん書きなぐってあって、意味不明な図や、血のように赤い文字が、ノートにびっしり書いてあり、狂気的です。
 なんというのか、そういう狂ったノートってフィクションの中ではよく見ます。たいがい追い詰められたキャラが書きがちです。でも実際に見たことないなあと思って、色々考えているうちに、狂ったノートってめちゃくちゃ面白いなということに気づきましたので、実際に書いてみました。

 

 

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 ぼくの狂気が伝わったでしょうか。正直あまりうまく狂えなかった気がしますが、このノートが誰かにみつかったらどうしよう……などと考えるとわくわくしてくるので、みなさまもぜひ、狂ったノート制作をしてみてくださいね!