うたたねの日記

 模様替えをしたはずみで買った新しいマットレスが届いた。
 巨大なダンボール箱に、ぎちぎちに詰め込まれたやわらかいはずの寝床は、ぺしゃんこに潰れて固く、不安を煽る薄さで小さくなっている。
 真空状態でマットレスを包む分厚いビニール袋を破ると、すっと空気を吸い込んで、手の中のどでかおせんべいがマシュマロのしなやかさを取り戻しかける。
 寝室のベッドから古い寝具を取り払い、回復中のマットレスを敷いた。その上に寝具を戻した段階で、やるべきことをやり終えた気持ちになった。
 帰りがけに買ってきた漫画を手にとってベッドに横になる。
 体の下で潰れたままのマットレスが、ほんとうの姿に戻った時、どれほどやわらかくなるのか楽しみにしながら、まだ読んだことの無いマンガを読んでいると、不意に夏休みのことが思い出された。
 本を枕元に置いて目を閉じると、さきほどよりずっと厚みを増したマットレスが、重力を受け止めてわずかに沈み込んでいる。

 もう何年もうたたねをしていないように思った。
 それはたぶん、僕が余裕の準備を怠ったせいだと思った。