雑談のはじまり

ハローこんにちはこんばんはわかめ、味噌汁、真理です。真理です。4名です。44私です。清水です。
今日は、雑談をします。雑談を楽しくするのです。色
雑談と言うのは、日記ではなく、雑記ではなく、エッセイではなく、雑談でございます。
雑談と言うからには、やはり喋らなくてはいけません。なので、僕は今しゃべっているのです。今は30ペチャクチャと喋りまくっているのです真っ暗な会議室でねショックショック。
1つの音声入力と言うものを使って、雑談を楽しくしたいなぁと考えたのですよ。わかめ

どうして雑談をしようと考えたのかと、それは最近文学の文章ばかり読んでいて前、なぜだかわからないですけれども文学を読んでいると僕はものすごく悲しい気持ちになるのだ。それがなぜだかわからないから、全く違うアプローチをして気持ちを切り替えたいと考えている子子子です。
つまり、人間の普遍的な感情とか構造とかそういうものを突き詰めていくと、悲しいのかもしれないですね。改行改行改行改行

僕はさっきお墓を歩いていました。お墓の中のまっすぐの道を歩いていました。会場が長く連なっていました。回答が海豚家
といってもお墓に用事があったわけではなくただ単に散歩の途中でわかり迷い込んだだけなのですか、怖い感じもしなくて幽霊みたいに歩き回っています。
そこでいろいろなことを考えました。
でも忘れてしまいました。
わかめ

文章を書くのは苦手ですが、でもやっぱり好きです。
小学生の頃から作文が大嫌いで、今も足すると靴が溢れてきて頭をかきむしり、七転八倒し、未来を悲観し、昭和浴びながら壁に手をついて、ちょうどタイムマシンを歌いながら泣いています。そんな毎日を繰り返しているので、すっかり頭がおかしくなってしまい、昨日おぜんざいに餅を2つも入れてしまいました。しかも寝る前にです。必ず太ります。必ず、太ります。そんな毎日を繰り返しているので、雑談をしたくなるのも、これが常識と言うものでしょうな。常識とははかないものでございます。

もうお気づきのことと思われますが、僕を喋るのがとても苦手で対仏と、言われてきましたお前退屈だろうと言われてまいりました。
自走であることを誇りに思うと同時に、やはり他人様に迷惑をかけることであるかもしれないので、雑談の力を身に付けることもこれは社会人として必須のエビデンスの園園、なんていうかあのあれですあれです。わかめ

お墓を歩いていてね、いろいろ考えたとさっき言ったよね、いろいろ考えたうちの1つね、一生に着いて家があるよ。。
エッセイと言うものは、題材が大事だけれども、題材がない人は、どうすれば良いのかと、もしかしたら書けないんじゃないかと、面白く角様には面白い題材が必要なのではないかと、では面白くない題材は面白く書けないのかと、そういうことを考えた挙句、題材を探す力もエッセイを書く力の1つなのだと見つけたり。
我見つけたり。声に出して言ってみたい日本語。笑見つけたり。小さい焼き丼。どんぐり

優しい人間に、優しい人間に、と口にする、モーターの音がする、もともとだけしかしない会議室で、椅子を並べてベッドにして、そんなに寝転がって天井を見ながら、天井の防犯カメラを見ながら、キャンプ、1人で雑談をしているよ、佐原砂漠だ、でもクスクス笑っているよ、夜のお化け、いびきも聞こえない、目の前に度上がってくる、喪主は嬉しいな。機械には多くのことを学ぶ魅力がわからない。でも機械が勘違いしたままにしておく。人と人が話し合う時ですら、言葉は正しく聞き取ることが難しい、正しく解釈することが最も難しいね、だから機械には、機械が聞こえたように聞き取って欲しい。

もし出身のある言葉を並べるのならそれはきっと雑談ではないのだよな、と言う雑談の定義を考えるまでもなく、楽しくお話しするのはきっと良いのだ。雑談は僕が下手だ。聞き役に回る方がずっと思い申請を送ってきたので。
からしゃべる。その都度押す。そんな風にして心が軽くなれば良いと思います。
1月は雑談を続けたいと思います。
そしたら雑談が上手くなって、喋るのが上手くなって、明日はもっと楽しくなるよ。おやすみなさい。わかめ。どんぐり。

悪意と誇り

 おそらく秋で、天気は雨で、午後四時くらいだったと思う。
 ひとりきりの部屋でゲームをしていると、玄関の戸が開く音が聞こえた。
 父は出張に出ていたから、母か姉が帰宅したのだろう。
 居間に向かって開かれた自室の戸を見ていると、予想通り姉が現れた。
 中学に上がったばかりの姉は重そうな学校指定通学バックをソファに投げ下ろした。
 冷蔵庫が開かれる。モーターがぶーんと低くうなる。
 コップをテーブルに置いた時の硬質な音。それからペットボトルから液体が落ちる音。
 僕は光を放つ特殊な鉱石に囲まれた洞窟でモンスターを倒し続けていた。
 モンスターを倒すとファンファーレが鳴り響き、対価が支払われた。
 経験値が貯まってレベルが上がると、気分が良くなる音楽が流れる。
 ちからやすばやさやまりょくが上がると、モンスターをより早く倒せるようになる。
 モンスターを倒すためだけにモンスターを倒している時、モンスターよりもモンスターだった。
 服を着替えた姉が隣にあぐらをかいた。絨毯の上にコーラの注がれたコップを置いた。
 レベルが上がったよ。聞こえてた。ねえ聞いてよ、傘を壊された。
 おそらく暗い表情をしていた。泣いているわけではなかった。姉は怒っていた。
 ロボット公園で友達と遊んでいた。H子ちゃんとA美ちゃんとタイヤをリサイクルした座面のブランコに乗って適当に話していた。小さな子どもが汚れた靴で立ち乗りをするからいつも泥だらけのあのブランコだ。適当にぬぐって座った。帰る方向が一緒だからH子ちゃんとは結構そういうことをする。今日はたまたまA美ちゃんもいたからたくさん話すことがあった。肩肘張らず適当に話すのが楽しいのだ。買い食いはしなかった。ロボット公園は団地の近くにあるから保護者が見たら告げ口をするかもしれないから。でも本当は飴を食べた。あんたは真似をしてはいけない。あんたは適当じゃないから。
 うなずきながらモンスターを八つ裂きにして燃やして氷漬けにして呪ってお金を掠め取った。
 友達と話している最中は雨は降らなかった。傘はブランコの横の柱に立てかけておいた。それから解散することになった。A美ちゃんは反対方向だから来た道を戻った。H子ちゃんとあたしは話しながら土手を歩いてきた。H子ちゃんの話は面白い。ドラマにはまっているらしかった。駄菓子屋の階段のところでH子ちゃんと別れた。ひとりで土手を歩いている時に雨が降ってきた。その時にやっと傘を忘れたことに気がついた。雨は小降りだったからそのまま家に帰ってきてもよかった。でも傘を忘れたことにお母さんが気づいたら、たぶん怒られる。だからあたしはロボット公園に急いで戻った。本当に急いで戻った。すこし走った。戻った時、あたしは目の前の光景が信じられなかった。ブランコの前に、骨がぐしゃぐしゃになった傘があった。少し泥がついていた。傘が放置されたのは本当にわずかな時間だった。走って戻ったんだから、本当にちょっとの時間だった。傘は自然に壊れたようには見えなかった。誰かが壊したに違いなかった。ねえ、どうして傘を壊す必要があると思う? 傘を壊してどうなるの?
 姉は泣いてはいなかった。ただ純粋に、とてつもなく怒っていて、戸惑っていた。
 犯人はだいたい分かっている。ロボット公園の近くの団地に住んでいて、あたしの傘を壊しそうなやつは分かっている。きっと窓からあたしたちが遊んでいるのを見ていたんだと思う。あたしが傘を忘れたのに気づいて、わざわざ壊したんだと思う。そいつは敵だ。あたしは明日絶対に敵を傘と同じ目に合わせたいと思う。
 僕はゲームの手を止めた。その傘はどこにあるの?
 公園にある。だって持ってくるわけないでしょ。お母さんが買ってくれた傘だよ。ぐしゃぐしゃになった傘を見せるくらいなら、忘れたことにする。

 

 

それはただの心配性

 それは大丈夫だよししみさん、全然大丈夫。心配するだけ無駄というものだよ。何しろまだ一度も誰も怪我をしていないのだからね、と言う人の尻拭いを何度かして、あるいは被害を被ってみて思うんだけれど、大丈夫だよと根拠もなく言う人は、他者に危害を加えるつもりなど毛頭なくて、ただ未来が少しも見えていない。僕に未来が見えているのかと言われると答えはノーだけれど。僕は心配性だ。

 状況を説明するとこうなる。
 まずA氏は部屋を区切るために、天井にカーテンを取り付けようと考えた。カーテンを取り付けることによって部屋を自由に分割することができて便利になるのだ、とA氏はわくわくしている。良い考えだと僕は思う。そういう試みはぜひともやってみるべきだろう。環境を変化させることで見えてくることもきっとあるのだろう。ところで天井にはカーテンレールをつけるのかい。あるいは壁に釘でも打つのかい。君はどういう工作をするんだい。
 工作なんてそんな面倒なことをすると思うのかいこの僕がはっはっは、とA氏は高らかに笑う。とても簡単な手順なんだよ、まずはカーテンを100円均一ストアで買ってくるだろう、それを画鋲で天井に止めるだけなのさ。全くお手軽にビフォーアフターなのさ。匠の技をご覧あれ。
 ぞっとした。

 画鋲という表現をしているだけでA氏はきっと何か特殊な、天井にくっつけても取れない道具を使うのだと思った。あるいは普通の画鋲を使うにしても、たとえば画鋲の上にダクトテープをべたべたに貼っておくとか、ある程度の補強、もしくは画鋲が「天井から落ちてこない工夫」をするんだろうなと思った。詳しいことを聞こうとする僕を、もはや少し邪魔くさそうにしてA氏はそんなことはしないったら、ただ画鋲でカーテンを留めるだけだよと言ってきかない。ついにはオフィス用のコロコロのついた椅子の上にぐらぐらしながら立って天井に画鋲を刺しはじめた。画鋲はカーテンの厚みと重みで、作業直後にもかかわらず取れてきそうな気配を濃厚に漂わせていた。ひとつひとつの画鋲の接着力が貧弱だから、A氏は無数の画鋲を天井に留めた。あまりに多いのでひとつくらい落ちてきても気づかないだろうなと思った。
 もちろん僕はA氏を止めた。気を確かに持ってくれ。この地球に重力がある限り、必ず画鋲は取れてくる。ニュートンでなくともそれは分かる。君がまめに画鋲を押し込み、数を数えて落下した画鋲がないか毎日数えるなら話は別だが、そんなことは絶対にしないだろうし、いつか必ず画鋲がおっこって君の足の裏に突き刺さる。いいか必ずだぞ、必ずそうなるから、こんなことはやめなさい。何度も言って聞かせたけれど、A氏はワッハッハと笑うばかりで相手にしてくれなかった。
 しばらくしてから彼の家を訪ねると、部屋を区切っていたはずのカーテンは外されていた。画鋲も撤去されていた。カーテンはやめたのかいと聞くと、結局画鋲が落ちてきてふんじゃってやめたんだ、その時は暗かったから気づかなかったんだ、とA氏はもにょもにょ言った。僕はなんだかぶるぶる震えてきた。よくわからない。全くよくわからない事態だ。誰が考えても間違いなく事故が起きる現場で事故が起きていた。そんなときどんな顔をすればいいのか全くわからない。

 A氏はおしゃれなので、作業机の上にたくさんのビンを並べている。ビンだ。なんのビンなのかは定かではないけれど、色紙の入ったビンや、光るビンなどが並んでいる。それはもちろんテーブルの上に好きなものを並べておくのは、きれいだから良い気分だし、いいと思う。けれどビンの他にも本や書類、洗っていないマグカップが3つ、アクションフィギュア、パソコン、ライター、サングラスなど、とにかく物で溢れかえっており、本などは机から半分はみ出しているくらいで、特に使うようなものでもないビンにおいては机のはじっこギリギリに寄せてあるし、物体がつねにクリフハンガーしている。リアルを極めたジェンガのようでもである。落ちても壊れないものはとにかく、ビンは机から落下したら割れるので、違う場所に置いたらどうか、とおせっかいに提案をしてみたのだけれど、A氏はいつものように楽観的にバハハハと笑い、もう一年くらいこんな机だけど全然平気だからね、これが僕のベストなんだよししみさん! と言ってはばからない。人の机にとやかく言いすぎるのも野暮なので、ふうんそんなものかあと答えてから3ヶ月後くらいに彼の部屋に行くと机の上からビンが一掃されていた。ビンは机から落ちて割れたらしい。その時すこし酔っ払ってて机にぶつかっちゃったから仕方なかったんだなあへへへとA氏は言う。なんと言えばいいのだろうか。なんと言えばいいのだ。だんだん間違っているのは自分の方なんじゃないかと思えてくる。足に画鋲が刺さった方がA氏は幸せなのだろうか。ビンが床で粉々になってガラス片が部屋中に飛び散ったのを酔っ払って指を切りながら掃除するほうがありがたいのだろうか。 

 A氏の行動に対して、もうあまり口を出すのはやめようと思っているのだけれど、先日彼の家を訪ねると、ガスコンロの真上の壁にガムテープでカレンダーが貼ってあった。何故そういうことをするのか、僕は本当にまったくわからない。わかりたくもない。
 本当に口を出すのはやめたいんだけれど、辛抱できなくなり「これ、剥がれてきた時にコンロに火がついてたら、燃えちゃうんじゃないかなあ?」と、ソフトに忠告してしまった。
 A氏は「そう? 大丈夫だよ」と言って、スマホでゲームをしていた。
 彼がそういうなら、大丈夫なんだろう。
 A氏はスマホのゲームが好きすぎて、月に五万円課金することもあるそうだ。
 大丈夫なんだろう。きっと大丈夫なんだろう。
 A氏はクレジットカードが使えなくなったそうだ。
 大丈夫だ。大丈夫。
 それは僕が気にすることではないんだろう。
 ただ僕が心配性なだけなのだろう。
 

 

 

想像

 赤ん坊があまりにも激しく泣きわめいている車中、足を広げて眠る茶髪のサラリーマン、手で口を隠して歯磨きをはじめるおばさん、日章旗のペイントがしてある日本軍のヘルメットをかぶった変な人、窓ガラスに映る疲れた顔の何者か、等を認識した時、頭の中の耳に近いところでぶつんと何かが音を立てて弾けた。弾力を失った古いゴムが、半分粉みたいになったゴムが切れた音だった。
 電車と電車をつなぐ連結部のドアがどぅるると音を立てて開き、ヌンチャクを振り回しながらブルース・リーが乗客に死亡遊戯する。ほぁた、ほぁた、ほぁた。茶髪のサラリーマンはヌンチャクで殴打され失神し、歯磨きをしていたおばさんはジークンドーパンチで歯をへし折られ、日本軍の亡霊はキックを受けて窓ガラスを粉々にしながら車外に吹っ飛んでいき、泣きわめいていた赤ん坊はジークンドーなでなでによって今は微笑みながらあばあば言っている。ブルース・リーは親指で鼻をこすって誇らしげだ。
 乗り継ぎの駅で電車のドアがどぅるると開き、降りようとしたところにホームの客が詰め寄せ、上手く降りることができないでいたのだけれど、A3の階段の方から勢いよくジョン・マクレーンが降りてきて、よごれたズボンの腰から拳銃を取り出して天井に向かってばんばんと2発撃つと、驚いた客はみんな丸くなって頭を隠したのでそのすきに僕はホームに出ることができる。マクレーンはホームの奥のエスカレーターを駆け上がっていく人物に向かって拳銃を構えるんだけれど客が邪魔で上手く照準を合わせることができず感情が昂ぶって「ホリーー!!」と絶叫しながら犯人らしき人物を追って駆けて行く、その背中を僕が追う。エスカレーターを登りきった時、背後で派手な爆発が起きて、地下鉄のトンネルは真っ赤な炎に包まれる。もちろん地上のマンホールは火柱を伴って吹き飛び、落ちてきた蓋が黄色いタクシーのボンネットをぺちゃんこにする。
 地下鉄から階段を上って地上に出ると、靖国通りの東の方からものすごい筋肉のスパルタ兵300人が雄叫びを上げながら銀色のデロリアンを追いかけて行ったのだけれど突然稲光がきらめいてアスファルトに炎の轍を残してデロリアンは消えてしまったので、スパルタ兵達は勝どきを上げて喜んだのを横目に三省堂に入った僕は、本棚に並んだ新しい本を見ただけで心が軽くなっていた。
 故郷に住んでいた頃、母が父が乗用車にぼくを乗せ、自宅から1時間の場所にある「帆船の本屋」に、しばしば連れて行ってくれた。その店が「帆船の本屋」と呼ばれていたのは、本屋さんの上に船のマストらしきものが2、3本ひょこひょこ立っていたからで、そのマストは夜になると意味もなくぴかぴか光るという、一等いかした本屋で、それは子供からすれば、ぼくからすれば、どう考えても安息の地だった。エルドラドであった。桃源郷であった。カナンだ。マンガが埋もれるほど置いてあり、小説が隙間なくぎっちり棚に詰まっており、大きな型のゲームの攻略本は、派手で、雑誌のところにはお兄さんやお姉さんが、田舎といえど立ち読みをしていて、それはとても大人に見えた。小説を吟味し、面白そうな本をお母さんに手渡す時、許されるかどうか、買ってもらうにあたいするのかどうか、裁かれる瞬間の気まずい沈黙を胃の重さを、今は懐かしく思い出し、今となっては誰の許可もいらない。
「その本、お母さん昔読んだことあるよ」、本さえ与えておけばおとなしくしている子供だったからという理由で、本を与えてくれたことが、物語を与えてくれたことが、今のぼくを支えてくれもする。

 

暗闇の窓から

 みずいろのガウンを着て過ごしている。立った毛のあたたかなガウンで、着る毛布だった。ふかふかに包まれていることは寒くないために気持ちの良いことで、例えばフローリングの上で気を失って倒れても、ふかふかが衝撃を吸収し、ふかふかが体温を保温する。救命性を着ている。衣食住のうち衣と住をカバーする着る毛布のすばらしい新春汎用性。かっこうつけたい時には着る毛布の裾をひるがえす。ひるがえして颯爽とトイレに行ったりできる。旅人のマントのようで気に入っていた。
 みずいろのガウンを羽織ったことと関係なく窓の外は晴れている。気持ちよく晴れている。ベランダに続くガラス戸の前に椅子を置いて陽の光を頭から爪先までざぶざぶ浴びている。着る毛布自体が発熱しているようにあたたかく、脳内睡眠物質ネムタミンが生成されたいそうまぶたが重い。ヘビーまぶたの隙間から小説を眺めている。紙の本の小説を冬の真昼のあたたかな陽光の下で読んでいる時、植物のよろこびみたいな気持ちになる。単純に陽光が生命に対して友好的で有効だった。日照時間とセロトニン分泌量について、季節性の鬱について、陽の光をざぶざぶ浴びることの実利的な側面、等々が頭の中を新幹線のように通り過ぎて消える。窓際の椅子の上でまどろみながら新春日向ぼっこスペシャルであったまりな。強い陽の光を浴びて手の中の本は宝物のように白くかがやいていた。その光景はとても見るにあたいする。
 新春洗濯スペシャルを行いながらリビングに移動して小説を読んでいるとき、外に出なくてはもったいないのではないかとオラクルが感ぜられ、耳元で小賢しいけれど短絡的な妖精が何事かを囁いていた。「目覚めよ、家を出よ」と、そういうことを申している。季節柄家に居続けることはおそらく普通であると認識しているけれど、社会の要請とは文脈を異にしているメンタルの恒常性、あるいは前述の日照時間関連のフィジカル的要請を伝える妖精であると思われた。機を見て自宅を脱出することに決め、ひとりでブレイクダンスでもしているかのような洗濯機が落ち着きを取り戻すまで尋常の休日として時を消費する。
 洗濯物を干物にしたあと、すっかり日の落ちた外界へ出た。薄紫の色の空。まるで人の消えたような静かな静かな住宅街。街路で立ち話をしている犬の群れと、リードを両手にわんさかぶらさげている主婦の方々、クラクションも怒鳴り声もカラスの声も聞こえない町並みがきれいだった。分厚いシベリア用のジャケットのジッパーを首の上までぎっちり閉めて、足早に歩みをすすめる。住宅街を抜け、浄水場横の並木を抜け、石造りの階段を登りきっていつもの土手に出ると、河川敷の野球場が煌々とライトを灯してダイヤモンドが白々と、はっきりと照らされて何かの準備が整っていた。歩きながら本を読んでいるけれど、文字がブレ、またブレ、視認性が著しく劣るので、フォントのサイズを大きくした。夜空にはちょんちょんちょんと星がまたたいた。
 帰宅して機械のスイッチを押すと暗闇の中に窓が現れる。どこかへ繋がっている窓だ。その仕組は分からなくても、もこ田めめめを、そしてTHX1138を、嵐のMonsterのMVを見られて、なんだかわからないけれど、ほんの200年くらい前は江戸時代だったなんて、にわかに信じがたいわい。